2009/04/11 コンパクトMRI10周年記念シンポジウム

Update : 2009.04.13 (20:01:45)

Posted : 2009.04.13 (20:01:45)

20090411_MRTe_symposium.jpg
4月11日にコンパクトMRI10周年記念国際学術シンポジウムを、つくば国際会議場にて開催いたしました。弊社は1999年4月15日に設立登記されましたが、コンパクトMRIの歴史と会社の歩みはほぼおなじだと考えています。この10年が節目となるように思いきったシンポジウムです。遠路お越しいただいた演者の先生方、聴講の皆様、会議場のスタッフの皆様には深く御礼を申し上げる次第です。*本写真提供者は安達聖さんです。
発表プログラムは大変に欲張ったもので、臨床用小型MRIから、デスクトップ型NMRまでの広い可能性を網羅いたしました。改めて感じ入ったことは、小型かつメンテナンスフリーになっての利点の数々です。
・これまでに設置できなかったような小さな診療室や、通常のクリーンルーム、低温室内へ持ち込める。
・磁気回路が小型になり、被写体と研究者の距離が近くなり、安心感や気楽さがある。
・磁器回路のオープン性が、被写体への負担軽減や、新たな被写体の撮像を可能にしてきている。
・設置占有面積が小さいので、他の計測装置と共存できる。ハイブリット装置も実現可能範疇にある。
・装置コストが下がったので、購入障壁が下がっているし、アプリケーションに予算を配分できる。
などといった部分です。これらは、一見、MRIのいわゆる研究開発事項ではないかもしれませんが、こういった自由度を獲得するためのダウンサイジングには、NMR/MRIのナレッジとその都度のデータの蓄積が必要になります。そのような試行錯誤で分かってきていること、および講演で公開された事実をまとめてみますと、
・リウマチ用MRIでは、撮像室ではなく診療室に設置できる大きさである。画質だけ言えば1.5Tの最適化された装置には敵わないかもしれないが、体の不自由なリウマチの患者さんに無理強いせずに、チェアに座ったままで撮像ができるという得難い利点を有している。また、導入/維持コストも、臨床機よりは低い。
・マウス・ラット用MRIでは、たとえばSPF内で、他の計測装置がある部屋に設置が可能である。被写体が目に見える位置で長時間の撮像を行えるという目視によるモニタリングは安心感がある。さらに、ESR-MRIや、PET-MRIなどのハイブリッド装置が実際に実現されている。他の装置との融合も可能かもしれない。このようなハイブリッドシステムの開発は、弊社の推すべき方向であると考えています。
・食品用のコンパクトMRIでは、多種多様な食品の特徴に対して、大きめのサンプルが扱える点と、T2減衰のコントラストが柔らかいという部分で、これまでの高磁場MRIに対して勝る場合があることが分かってきている。つまり両社は相補的な装置で、弊社のMRIは低磁場側を担当できる能力がある。コンパクトMRIは普通の実験室に導入できるので、手軽にデザインしたアプリケーションをすぐに実施できる気楽さがある。
・樹木用MRIでは、磁石よりも大きな測定対象を撮像できることを特徴としている。また、開放型のRFコイルを使用することにより、SNRを犠牲にしても、広範囲の領域をスキャンできるメリットを獲得している。小型クレーンと組み合わせることができれば、野外の樹木の枝をスキャンできるようになるかもしれない。
・雪氷研究用MRIでは、これまでMRIのサンプルとしては扱いが難しかった0℃以下のサンプルの取り扱いを上手にクリアしている。将来的には南極まで持ち込むという夢があるそうだが、実現可能な気がする。別研究では、筆者は飛行中の航空機内でMRI実験を行ったことがある;つまりやる気があればできる話であろう。冷凍食品の研究のMRIにも適用できるヒントがある気がする。
・小型NMRセンサーを用いた燃料電池研究は、安定度が向上してきている。オープン型の磁気回路で、燃料電池系が自由に設計できる利点が強い。もちろんB0方向による計測系の制限もあるが、これはRFコイルを工夫することにより、いろいろな実験ができそうである。
・片側解放磁石、超小型NMR磁石による、NMRアプリケーションへの取り組みは、やはりSNRや磁場安定性との戦いである。実サンプルへの応用にはまだ距離があるかもしれないが、代替計測手法がないので、決着がつくまで追いかけることになるであろう。
以上のような要約になるかと思います。
それにしても10年前には主磁場の磁石すらない状況でMRI装置を扱い始め、永久磁石を採用することで百花繚乱は言い過ぎかもしれませんが、少なくとも今回ご発表を頂戴したスピーカーの先生方には素晴らしい数々の研究開発を行っていただけるところまでやってきました。今度は5年度、10年後の将来を見極めながら進めたいと思います。