研究情報:錠剤(製剤)の溶解過程の1H-MRI。D2Oを用いて乾燥した1HのT2緩和時間を延命する。

Update : 2019.03.26 (21:52:23)

Posted : 2019.03.26 (21:48:53)

記事作成 2019/03/26 21:38  

 錠剤(風邪薬/ビタミン剤)が水に溶けていく時間変化を1H-MRIで追跡しました。これはありがちな撮像と思われますね?以前にはO社から専用の0.5T永久磁石装置が販売されていたこともあります。しかし今回は違います。

 まず,ほとんどの錠剤には1Hプロトンが含まれていると思われますが,そのままでは非常に乾燥しており,濃度も低いので単純なMRIで捉えることはできません。それで水に溶かせば溶解過程の1H-MRIできますが,フ~ン,そうだよね,という感嘆は限定的なものです。

 そこで今回は一工夫を施しました。溶媒としてD2O(重水)を用い,乾燥した錠剤が充分に浸りきるまで試験管を満たして計測を開始。装置は先日,都内の大学から乗用車で持ち帰った1T/60mmの食品用MRIです。繰り返しになりますが標的NMR原子核は1Hプロトンです。重水が徐々に湿潤していく錠剤中のH2Oあるいは分子のOH基を構成する1Hプロトンは,なんと1H-MRIで捉えられるほど,T2が長くなるようです。興味深いのは,まさに錠剤(製剤)が溶解している部分のMRI信号値が高くなっています。今回の撮像では,ビタミン剤がサーッと溶けていき,遅れて風邪薬が2時間ほどで乾燥した部位が無くなりました。今回の方法では(外部からH2Oを加えるのではなく)”錠剤に含まれていた1Hのみを可視化した”というのがユニークな点です。

 乾燥したものが一工夫で面白く計測できるという好例と思われます。乾燥米,乾燥パスタの吸水など,材料の新たな一面が見えてくるかもしれません。担当者より。